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奮闘記

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2006-10-27 セミナー

_ ちょっと自信がついたかも

今日はペリメーター研究所で僕がセミナーをした。英語に慣れたとはいえ、1時間以上喋るのはやっぱり緊張する。国際会議やワークショップで英語講演をした経験は10回くらいあるが、それらはどれも15分程度。英語で2時間くらいセミナーをした経験もあるにはあるが、日本でのことだったので参加者のほとんどは日本人で、もし英語に詰まっても誰かが助け舟を出してくれるという安心感があった。しかも、質問されたとしても日本人の話す英語はとっても聞き取りやすいから問題ないのだ。

結果からいうと、セミナーはうまくいった。英語は何の問題もなかった。ただ、物理の内容でちょっと詰めが甘かったところがあり、終わった直後は「うーん、もっと計算しときゃよかったな」という思いもあったのだが、後から教授達や他のポスドク達に「面白かった。」「いいトークだった。」などと言ってもらえ、しかも「いい仕事だ。」とも言ってもらえたので、正直自分ではちょっと驚いた。というのも、僕のやっている仕事は弦理論と相対論の中間のような仕事で、日本ではやっている人があまりいないジャンルなのだ。だからこそうちの研究所に来たのだが、こんなにも受け入れてもらえるとは想像していなかったのだ。これは嬉しい誤算だった。セミナー中にされた質問も、確かに今まではされたことがなかったものが多く、しかも建設的だった。ふむ、どうやらホントにいいセミナーが出来たようだ。ちょっと自信が出てきたぞ。

専門的なことをここに書いても仕方ないかもしれないが、僕もガンガン仕事をしているんだということをたまにはアピールするために質問の内容をちょこっと書いておこう(笑)。パーティーだのクラブだので遊びほうけているわけではないのだ。平日は12時間以上研究所にいるし、週末も土日とも休むことなんて滅多にない。土日とも研究してしまったときは、何となく人として間違っている気はするが。

さて、特に興味深かったコメントは、僕らが扱った非超対称Dブレーン系の不安定性がホーキング輻射とは結びつかないのではないかという指摘である。確かに僕らが扱っている系はゼロ温度に相当していてホーキング輻射はない。では、系が持つ開弦のタキオンモードは、バルクでは一体何の不安定性になっているのか。今扱っている古典解は裸の特異点を持っているので、それが系の不安定性を一手に引き受けている可能性がある。しかしこれを調べるためには系の摂動を計算すればいいのだが、解に特異点がある以上、摂動計算には境界条件の問題がある。もし解に弦のα'補正を入れることが出来て、スムースな解を構成することが出来ればDブレーンサイドの不安定モードとバルクの不安定モードを対応させることが出来ると思うので、これは進めてみたい計算である。補正によってfuzzball 的な解が出てきたらなお面白い。ただし、現在わかっている fuzzball は、曲率特異点を解消するようなものではないので簡単には結びつかないかもしれないが。他にも今扱っている系を動的に拡張する方法についてなど、いくつか役に立ちそうなコメントをもらった。これも進んでみたい方向のひとつだ。

何はともあれ、僕のやりたかった方面の仕事をやっている人がうちの研究所には何人もいるので良かった。はるばるカナダまで来た甲斐があったな。


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